遙かフットボールを離れて
初めてサッカーに関わったのは1969年のことだった。
何のことはない、ただ小学校のサッカー部に入ったのだ。その後、プレーヤーとしては高校まで続いた。
当時、サッカーは世間的には実にマイナーな競技だった。
例えば何かの大会であれ、アウェイで行われる日本代表の試合中継など望むべくもなく、翌日の新聞に載る試合結果だけが全てだった。
遠い東南アジアで行われた試合。フィールドを照らす照明灯に虫が群がり、纏い付くような暑さと湿気の中を戦う我らが代表… そんな想像上の光景が自然と頭に浮かんだ。
そして今や伝説の番組「三菱ダイヤモンド・サッカー」だけが唯一世界への窓だった。
その頃名古屋在住だったが、テレビ東京系列局はまだ無く、そのためこの番組を目にすることは能わなかった。ただ、愛知県の隣にある岐阜県の岐阜テレビと三重県の三重テレビは、なぜかこの番組をオンエアしていたのだ。
今でこそケーブルTVを介して難なく視聴できるであろうが、時代は70年代だ。
結局、プレーの参考にするという名目で、何とか無理矢理UHFアンテナを親に立てさせたのだった。アンテナの方向は、家から距離的に近いという理由で三重テレビ。映りが悪く色落ちする画面、荒い粒子の中、それでもそこで展開される上質のサッカーは素晴らしかった。
80年代など、天気の良い日曜日ともなれば国立競技場に時々出かけた。
僅かな観客が見守るバックスタンドでビール片手に、読売クラブVS日立なんぞをのんびり観戦したものだ。
そして、あれよあれよの93年Jリーグの誕生。それに続くドーハの悲劇と、ジョホールバルの歓喜へ。
1997年11月1日、ぼくはソウル・蚕室(チャムシル)競技場にいた。
でも今はかつてほどサッカーに熱くなれない自分がいる。
今年に入って、二冊のサッカー本を読んだ。偶然どちらも同じ版元のものだ。
一つはこれ。
「サッカー茶柱観測所」えのきどいちろう 著 駒草出版 本体1,500円

思い出した。良い思い出のない2002年だが、それでもスカパーで放映されていた「ワールドカップ・ジャーナル」だけは最高だった。夢中で見ていたっけ。
その番組の司会が、えのきどいちろうさんだったのだ。
だからこの本も最高だ。ひとつひとつのコラムが実に楽しい。サッカーにふたたび回帰したくなる、そんな一冊である。
そしてもうひとつ。
「サッカーの上の雲」小田嶋 隆 著 駒草出版 本体1,400円

諧謔味あふれるこの人の著作はサッカーに関しても健在だ。
さて、そろそろスタジアムに戻ってみるか。
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